CD「高橋悠治作品集」好評発売中

CD「高橋悠治作品集」好評発売中

 

 

 

 

「竹田恵子オペラひとりっ切り〜高橋悠治作品集〜」
ALCD-7237
価格 2,800円×1.1=3,080円(消費税含む)

 

 

 

 

■水仙月の四日 宮澤賢治/原作 高橋悠治/台本構成・作曲
■芝浜     古典落語より 高橋悠治/台本構成・作曲
■めをとうし 小熊秀雄「ある夫婦牛の話」による 高橋悠治/台本・作曲
■祖母のうた 高橋悠治/台本・作曲

 

 竹田恵子/うた
 高橋悠治/ピアノ
 水野佐知香/ヴァイオリン
 亀井庸州/ヴァイオリン
 藤村俊介/チェロ
 多井智紀/チェロ

 

 

CD月評より

 

 

■「レコード芸術」2019年8月号
                                     長木誠司

 

 高橋悠治の4つの作品。とにかく語りと歌の間を縦横無尽に跳梁する竹田の芸風で聴き込んでしまうCDである。もちろん、選ばれたテクストの妙味が基本にあるが、性格を異にする4篇のヴァラエティを、竹田の声がはるかにその多彩さにおいて追い抜いてしまっている現実が痛快だ。これぞひとり芝居の醍醐味。老齢な語り部が幼い子供たちに優しく語り欠ける口調が基調となる宮澤賢治の《水仙月の四日》のテクストに対し、古典落語に基づく《芝浜》では一転して講談調の切れの良さ、夫婦の対話の妙味を示す。加えて、語りだけではなく歌への移行や歌からの移行がテクスト内在的に明滅し、その自然な往来にはもう舌を巻くばかりである。《めをとうし》のテクスト(1927)は、この高橋作品で知ったひとも多いと思うが、ここでの竹田は声と声による演技の軽快かつ豪快な振幅が極大値を取り、かなりシリアスな内容であるにもかかわらずケッサクであることしきり。もっとも、こうした竹田が自由闊達に泳ぎ回れるのも、それを強力に支えもせず邪魔もしない高橋のピアノがあるからでもある。「オペラひとりっ切り」の枠からはずれるという《祖母のうた》は、ふたりの息子を戦争で差し出した母の歌が中心になっているが、たしかに「歌」的な要素で占められるにせよ、語りで綴る他の3作のあとに繋げてもまったく違和感がない。むしろ、アルバムの性格を最後に締めてはっきりとさせる効果があろう。

 

 

■「ぶらあぼ」2019年8月号
                                     藤原 聡

 

 2004年にオペラシアターこんにゃく座を対座したのち竹田恵子が立ち上げた「オペラひとりっ切り」シリーズの最新CDには高橋悠治作曲による4作品を収録。限られた音数によるある種“抑制”された高橋の音楽はそれゆえに聴き手の想像力を大いにかき立てるものがあるが、これに対して竹田の歌は様々な声色と表情を駆使して実に多様な情景を現前させ見事。この両者の絶妙なコントラストが一見モノクロームと見えるこれら「オペラ」を実に奥行きあるものたらしめている。中でも〈芝浜〉のペーソス、〈めをとうし〉の悲しさとほのかな希望の入り混じった独特の情感が胸を打つ。

 

■タワーレコード

 

                                     古川陽子
孤高の歌役者、竹田さんのひとりオペラの舞台の作品から、高橋悠治さんの手による3曲と“祖母のうた”の新録音。明晰な語りと歌に無駄な音を排した楽器が絡み、巧みな表現でそれぞれの世界を見事に表現。古典落語の「芝浜」を女声とピアノとストリングスのアンサンブルにする斬新さ。落語好きの方にもぜひお聴き頂きたい。“水仙月の四日”では宮沢賢治の独特の雪の中の情景が生き生きと浮かび、“めをとうし”はぞっとするような残酷な場面でありながら不思議なファンタジックな世界を描き、“祖母のうた”での深い哀しみは胸に迫る。凝縮した音作り、聴き応えのある一枚です。

 

■音楽現代

 

                                        石塚潤一
30年あまりに亘ってオペラシアターこんにゃく座で活躍した竹田恵子は、2004年の退団後、新プロジェクト「オペラひとりっ切り」を開始、9作の委嘱作品を世に問うている。当盤はこの中から高橋悠治作品を3曲選び、別の機会に書かれた《祖母のうた》を加えて、高橋悠治作品集としたもの。基本は竹田の歌唱とピアノ伴奏のみ、作品によってヴァイオリンとチェロが加わる、最小のオペラともいうべき編成である。高橋悠治の楽曲は、一見単純だが音組織が相当に特徴的で、決してうたいやすいものではない。この中で、語り部分と歌唱部分を自在に往復する竹田の演奏が見事。特に、屠殺場に曳かれた老牛たちの運命を描いた、《めをとうし》で聴かれる表出力に震えた。


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